いのちが喜ぶ話(57話)生かされているいのち

 大熊です。平成23年3月11日、皆さんの記憶にもあると思いますが、東日本大震災は日本を襲いました。皆が泣きました。この記事を紹介します。

震災の当日ですね、投稿者であるお母さんは保育士で高台にある保育園で勤務しておりました。留守を守っていたおじいちゃんは車で避難するためにスタンバイしておりました。

障害のあるお孫さんを、足の悪いおばあちゃんが必死で車の後部席に押し込んだものの、なんと高波が襲ってまいりましてね、ご自分が乗り込む時間がなく、迫り来る津波におばあちゃん乗り込む時間を待っておりましたら、みんなが死んでしまうと思ったのでありましょう。

「逃げろ、後ろを向くな、生きろ」と言い残し、最後に「ばんざい、ばんざい」と言いながら両手を挙げてばんざいをして、その車を見送ったということでありました。

どうしても助けたかったおばあちゃんでありますが、おじいちゃんは孫を助けるためにアクセルを踏みました。おばあちゃんは津波に飲み込まれ、そしてその「ばんざい、行け」、という声に押されてアクセルを踏んだ祖父。そのおかげでお孫さんは救われたのでありますが、家族みな悔いが残り、つらく悲しい思いをしたといいます。

今から読み上げる文章は、おばあちゃんの娘さんによる投稿文であります。

母へささげる私の誕生日。先月29日は私の誕生日だった。去年はチョコレートシフォンケーキを用意して待ってくれていた母に私は「えー、バニラのほうが好きなのに。」目も悪く体が丈夫でない母が一生懸命歩いて探してきてくれたのに、わがままな私はいつも、えーっと言ってばかり。本好きな私のために図書券を用意してくれたときも「こんな歳で図書券っていやだね。」と言ったこともあった。

でも今年になってはじめてわかった。誕生日は自分のためにあるんじゃない、生んでくれた母にありがとうと感謝する日なのだと。

母は三月の震災で逝った。迫りくる波を背にしながら私の娘を車に押し込み「生きろ、ばんざい」と叫んで流されていった。そう後から聞かされた。母に誕生日の報告をするため、携帯電話にあるババの(お母さんのことですね)ババの番号にかけた。そして大きな声で言った。「お母さん、生んでくれて本当にありがとう。」

と言う文章であります。

いのちを守る親の会。おなかの中の赤ちゃんの救命センターでございますが、半年ほど経ってからは、生んでくれたお母さんに対して子供が大きくなって、お母さん生んでくれてありがとう、というのかと思ったらですね、生んだお母さんが自分のお母さんにこんな思いで私を生んでくれたんだねっていって、感謝して自分の誕生日にお母さん生んでくれてありがとうというお母さん方が続々と出てまいりまして、その話に感動いたしまして「いのちを守る親の会」を中心に全国の救命サポーターさんたちが、お母さん生んでくれてありがとう運動を始めました。

いろんなお母さんありがとうという言葉があるんですけれども、もっと早くこの運動をしておけばよかった、もっと早くおかあさんに生んでくれてありがとうと言っとけばよかった。

もう亡くなってしまって言えないという方に、仏壇の前でお墓の前で、お母さん生んでくれてありがとうと、お母さんを偲ぶこともできますよということを私が伝えまして、そしてそういうことを実践されているお母さん方もおられるようであります。

今日は3.11東日本大震災でおばあちゃんを亡くしたお母さんや、その方のお母さん生んでくれてありがとう、という言葉を紹介しました。

仏教には“代受苦”という言葉があります。代わりに苦しみを受ける、と書いて代受苦であります。実は日本全体の人が受ける苦しみを、東北の方々をして代受苦したのかもしれません。

ひとごとではありません。そしてこの家族においてはみんなが受ける苦しみを、おばあちゃんが代受苦者として受けてくれたのかもしれません。

実は、このおばあちゃんが生まれたころというのは、日本は戦争中でですね、特攻隊が飛び立っているころ。このころにですね、おばあちゃんは小学校生活を過ごしておられた方だそうであります。特攻隊の多くは、お母さん生んでくれてありがとうと言って、お母さんのためにこれから生まれ来る子供たちのためにと言って旅立ったそうであります。

戦後いろんな批評がありますけれども、自分たちのお母さんお父さん子供たちを守るために命をかけた人もたくさんいるわけでありまして、そういう人たちのおかげで私たちは今生きていることができているということも事実なのであります。

代受苦、私たちの身の回りで、この代受苦者というのはたくさんいるのではないでしょうか。

お母さん生んでくれてありがとう。私たちが生まれた日、実はお母さんにとっては命をかけた出産の日であったということも言えるわけであります。そんなことも含めて代受苦。

そして私たちは生かされている命であるということも思い浮かべて、そしてさらに感謝を深めていくことが大事なのかもしれません。

今日はお母さん生んでくれてありがとうという言葉、3.11に関してのエピソードをお話させていただきました。今日もありがとうございました。

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